コラム

スポーツと紫外線対策2024

2024.04.22

 

コロナ禍に1年遅れで開催された東京オリンピック・パラリンピックから早3年。今年はパリで熱い戦いが繰り広げられます。
スポーツ活動に紫外線はつきもの。
しかし「日焼けは努力の証」というのは過去の話。屋外スポーツはもちろんのこと、屋内スポーツであっても日常的な紫外線対策は非常に大切です。

 

紫外線対策を怠ると

 

では、アスリートやスポーツ愛好家が紫外線対策を怠ると何が起こるでしょうか?

 

① 紫外線対策を怠ると...パフォーマンスが落ちるかもしれない!

スポーツをする際は動きやすさや軽量化を重視して、肌を露出したウエアを着用することが多いと思います。すると、当然のことながら紫外線を浴びる肌の面積も広くなります。紫外線の急性傷害の代表格は日焼けです。たかが日焼けと思われるかもしれませんが、広範囲で炎症が起こると痛みやかゆみに悩まされる可能性があります。痛みやかゆみといった不快な感覚はパフォーマンスや集中力に影響します。また、程度がひどい場合は飲み薬などでの治療が必要になることも。常にアンチ・ドーピングを意識しているアスリートにとって、飲み薬というのはなるべくなら避けたいですよね。

さらに、紫外線を大量に浴びると免疫機能が低下する可能性もあります。免疫はさまざまな病原体から体を守る重要なシステム。菌やウイルスに感染してしまうと競技活動に影響が出るかもしれません。
最近では紫外線が疲労に影響するという報告もあります。そのメカニズムは未だ不明ですが、ベストなパフォーマンスを発揮するためにも紫外線対策が重要だということはご理解いただけますよね。

 

② 紫外線対策を怠ると...しみ、しわ、皮膚がんができるかもしれない!

紫外線の影響は日焼けだけではありません。子供のころから何十年と紫外線を浴び続けると、将来的にさまざまな問題が起こってきます。その一つが皮膚がんです。皮膚がんの中にもいくつか種類がありますが、紫外線の影響でできる皮膚がんの一部は非常に悪性度が高く命にかかわるものもあります。
また、紫外線はしみ、しわ、たるみといった肌の変化(光老化)を起こします。一度起こった光老化を戻すことは非常に困難です。

皮膚がんや光老化で後悔しないためにも、しっかり紫外線対策をしましょう。ポイントは、長年浴びた紫外線の影響が蓄積していくということ。つまり、子供のころからの継続的な紫外線対策が重要なのです。

 

スポーツシーンでの具体的な紫外線対策

 

1. 紫外線の強い時間帯での活動を控える!
2. 日陰を確保する!
3. 衣類で肌を覆う!
4. 日傘、サングラスを使用する!
5. サンスクリーン剤を塗る!

 

競技特性やルールによっては実践できない対策もありますが、サンスクリーン剤の使用に関してはほとんど方が実施可能なはずです。
サンスクリーン剤にはさまざまな商品がありますが、スポーツシーンでは汗をかきますので耐水性(ウォータープルーフ)のものが良いのでしょう。しかし過信は禁物。耐水性があるとはいえ、汗で流れてしまったり、汗をタオルで拭う際にサンスクリーン剤も拭き取られてしまうこともあります。面倒ではありますが、2~3時間ごとに塗り直しましょう。

最近ではUV耐水性の表示(「UV耐水性★」「UV耐水性★★」)が新たに導入されていますので、購入の際にはPAやSPFとともに耐水性にも注目して選んでみてください。

<文献>
プレスリリース 株式会社コーセー  2024年4月16日
「日やけにより、運動時の疲労が高まることを確認~運動疲労に対する日やけ止めの価値拡張の可能性~」(accessed 2024/4/22)
https://corp.kose.co.jp/ja/media/2024/04/20240416.pdf
環境省 紫外線環境保健マニュアル 2020年3月(accessed 2024/4/22)
http://www.env.go.jp/chemi/matsigaisen2020/matsigaisen2020.pdf

 

(執筆)
大森 俊
小倉第一病院 皮膚科 部長

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